USJや丸亀製麺、ネスタなどを立て直した株式会社刀代表取締役兼CEOの森岡毅氏が、『カンブリア宮殿』に出演されました。
そこで、森岡毅氏の経歴を調べてみました。
森岡毅氏は、2009年にヘッドハンティングされてUSJに入社されました。USJは客足が減ってガラガラだったようですが、森岡毅氏のアイデアと手法によってV字回復させました。
森岡毅氏の経歴とアイデアの出し方の手法を調べてみました。
森岡毅氏の経歴
まずは、森岡毅氏の経歴を見ていきましょう。
森岡毅氏の経歴は、
- 1972年生まれの43歳
- 神戸大学経営学部卒業
- 1996年、P&Gに入社
- 日本ヴィダルサスーン北米パンテーンブランドマネージャー、ヘアケアカテゴリーアソシエイトマーケティングディレクター
- ウエラジャパン副代表
- 2010年USJに入社
- 2012年、ユニバーサル・ワンダーランドオープン
- 2014年、ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッターオープン
- 2017年、株式会社刀設立
2010年にCEОのグレン・ガンペル氏に、マーケティングの力を買われてヘッドハンティングされて、USJに入社されました。
当時のUSJは、開業時に比べるとかなり集客力が落ちていました。
開業時の2001年には、1,100万人の来園者があって、1,000万人到達の最速記録を打ち立てたんです。
それが、次第に落ちて行き、森岡毅氏が入社される前の2009年には、730万人まで落ち込んでいたんです。
ですから、ガンペル氏は、森岡毅氏のマーケティングの技術を何とか集客に生かしたいと考えられたんです。
では、その数字を見ていきましょう。
- 2001年度 1,102万人
- 2002年度 764万人
- 2003年度 989万人
- 2004年度 810万人
- 2005年度 831万人
- 2006年度 870万人
- 2007年度 864万人
- 2008年度 814万人
- 2009年度 800万人
- 2010年度 816万人
- 2011年度 880万人
- 2012年度 975万人
- 2013年度 1,050万人
- 2014年度 1,270万人
- 2015年度 1,390万人
- 2016年度 1,460万人
- 2017年度 1,493万人
- 2018年度 1,430万人
- 2019年度 1,460万人
- 2020年度 490万人
- 2021年度 550万人
- 2022年度 1,235万人
(出展:ウィキぺディア)
これは、どの番組でも言われていますが、奇跡的なV字回復です。盛岡毅氏がUSJに入社する前の2倍にまで、来園人数が増えています。
もちろん、一人ではできなかったんだと思いますが、アイデアは、たった一人、森岡毅氏の頭の中から出たものです。
ちなみに、ライバルのTDLはどうか?というと、
- 2013年度 3129万人
- 2014年度 3137万人
約2倍ですね。
では、森岡毅氏はどうやってこれだけの数字を上げることができたのでしょうか。
その具体的な方法を見ていきます。
USJがV字回復した森岡毅氏のマーケティング手法
では、USJをV字回復させた盛岡毅氏のマーケティング手法を順々に見ていきましょう。
2011年GW スマイルキッズフリー
2011年3月には、東日本大震災がありました。
巷では、自粛ムードが漂っていたんです。東北の方々の事を思うと、なかなか行動を起こせなかった人たちが多いんです。
そんな時に、森岡毅氏は、大阪府と提携して「スマイルキッズフリー」と言う企画を打ち出します。
これは、関西の子供を無料でUSJに招待するものでした。
これによって、子供たちを連れてくる親と、関西以外のお客様も増えていったようです。
2011年夏 ワンピースプレミアムショー
それまでも行ってた「ワンピースプレミアムショー」の宣伝を大々的に行いました。
USJは、映画のテーマパークという意識から、それまでは積極的なPRをしてこなかったと言います。
これによって、ワンピースファンの取り込みが出来ました。
2011年夏 モンスターハンター・ザ・リアル
ワンピースと同時期ですが、ゲームのモンスターハンターとの提携を果たして、等身大のリアルなモンスターを展示されました。
これで、モンハンのファンや、オタクと言われる人たちの取り込みをしました。
2011年秋 ハロウィン・ホラー・ナイト
USJ全体をお化けやしきにしてしまいました。
ニュースでも大々的に報じられたので知ってると思いますが、ゾンビにふんした職員がお客様を襲うという、テーマパークの根本的なイメージを覆したイベントでした。
それまでの年は、ハロウィンイベントは7まんにんくらいでしたが、40万人以上が来援して6倍の集客を果たしました。
2011年冬 世界一の光のツリー
ユニバーサル・ワンダー・クリスマスのイベントで作ったクリスツリーです。
鷹さ36M、33万個の電球で飾られて、ギネスも世界一を認定しています。
2012年春 ユニバーサル・ワンダーランド
低年齢の子供たちのために、1日中ずっといられるように考えられたものです。
USJのなかに散らばっていた子供用のキャラクターを1か所に集めたことと、親の目線でも楽しめるように作られました。
これも、映画と言うよりは、TDLを意識したもので、ファミリー層の獲得を目指したものです。
2013年春 ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ
これは、後ろ向きに走るジェットコースターです。
今では、USJのトップアトラクションです。
これを作ったきっかけは、森岡毅氏が寝ていた時に思いついたそうです。
もちろん、夜も寝れないくらいに悩んでいたようなんですが、その日の夜の深夜2時34分に思いついて枕元のメモに書いて、翌日会社に持っていって企画を通したそうです。
コンセプトは、「なるべく安く、人をあっと言わせる」でかんがえていたそうです。
おかげで、国内のアトラクションの待ち時間の最長記録、9時間40分を打ち立てました。
2013年夏 スパイダーマン・ザ・ライド-4K3D
これは、リノベーションです。
今まであったスパイダーマン・ザ・ライドを4K3D化させたものです。
やはりお金を掛けずにどうやったら集客、満足してもらえるかを考えた結果です。
2013年秋 バイオハザード・ザ・リアル
新しいシューティングアトラクションです。
何が新しいのかと言うと、クリアできる確率が0.004%!のサバイバルゲームです。
ゲームのファンを取り込みました。
現在では、「2」「3」とバージョンアップされています。
201年7月 ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター
総工費450億円のテーマパークです。
これは、説明するまでもないですね。
売上が700億円もいったそうです。
ザーッとみてきましたが、森岡毅氏の戦略が判りましたでしょうか。次に、森岡毅氏の戦略を見ていきます。
森岡毅氏の考え方の基礎
森岡毅氏は、テーマパークが好きなんです。休みの日にはUSJにもお金を払って家族と来て楽しんでいらっしゃいます。調査目的もありますが。
そして、USJをV字回復させた一番の原因は、ハリーポッターを日本に作ろうと思った事だと話されています。
実は、日本のUSJとアメリカのUSJはまるっきり別の会社なんです。
そして、森岡毅氏が入社して一番初めにしたことは、アメリカのUSJに行ったことです。
その時に、アメリカのUSJの作りこみの凄さに感動して、必ず日本に持ってくることを決断したんです。
そして、日本に帰ってきて、社長に直訴していました。入社2か月目です。その時の総工費見積もりは400億円。年間の売上高は800億円。
とうぜん、怒り狂って拒否されますが、粘り強い説得のおかげで何とかOKをもらいます。そのための、いろいろな施策だったんです。
一番のテコ入れは、ファミリー層の取り込みだったので、ユニバーサル・ワンダーランドを建設して、来場者数を増やす事が目玉の企画でした。
ただ、ハリポタのOKをもらうのと、ユニバーサル・ワンダーランドの着工が同じ時だったようです。
つまり、うまくいくかどうか全く分からないときに、ハリポタのOKをもらったんですね。
まさしく、背水の陣です。
他のイベントもすべてハリポタのためです。そのために、なにをしなければいけないのかを考えた結果、多くのイベントが立ち上がったわけです。
森岡毅氏が離されているのは、3段階ロケット構想です。
- ファミリー層を取り込む
- ハリポタの誘致
- アジアにUSJの拠点を多く作る
一番のファミリー層を取り込むためにしたことは、既存のイメージを打ち破るということです。
つまり、映画に特化したテーマパークなので、来場者数が減っていると考えたので、モンハン、ワンピース、キッズ、進撃の巨人、バイオハザードなど、映画とはあまり関係ないイベントをして、集客に応用していったんです。
そのため、映画好きのファンからはクレームが数多く寄せられたと言います。イメージが壊れると。
でも、森岡毅氏はハリポタが最終イメージでしたから、関係なかったのではないでしょうか。
あのハリポタでしたら、映画ファンも納得しますよね。その部分が一番のマーケティングだったと思います。そんな森岡毅氏のアイデアの手法をまとめてみます。
ただ、ざんねんながら、3番目の「アジアにUSJの拠点を多く作る」のは成功されていません。
というのも、USJがアメリカの会社に買収されたからです。盛岡毅氏はそこで、USJを退社されてご自身の会社を作られました。
森岡毅氏のアイデアを出す手法
森岡毅氏は、あるインタビューでマーケティングについて話されています。
「うまく行ってる状態を想像して、そこから逆算して何が必要なのか考えるのがマーケティングだ」
これは、素晴らしい言葉だと思います。
森岡毅氏にとって、うまく行ってる状態への一番の切り札がハリポタだったのでしょう。
何が必要なのか考えた結果が、様々なイベントだったと思います。
そして、その上で、どうやったら必要なことを考えられるかも話されています。
「誰もが求める、アイデアの“神様”の正体。それは”確率”です。いいアイデアを生み出す確率を高めるため、私は常に”イノベーション・フレームワーク”を実践しているだけなのです」(同)
~中略~
さて、森岡が言う“イノベーション・フレームワーク”とは、(1)フレームワーク(2)リアプライ(3)ストック(4)コミットメントの4つの手法を組み合わせ、実現可能なアイデアを発想する方法。なかでも(1)のフレームワークは、偶然性に頼らないため、誰でも真似しやすいのが特徴だ。
「広大な畑のどこに宝が埋まっているのか、アイデアの手がかり(必要条件)を明らかにするのがフレームワークの役目です。それにより、最小の努力で最大の効果を上げる=強いアイデアを生み出すことができるのです」
(出展:プレジデント)
書き出すと、アイデアを見つけるためには、4つの方法が有効だと話されています。
- フレームワーク
- リアプライ
- ストック
- コミットメント
そして、フレームワークは二つの方法を使われています。
一つめは、100%法です。
必ず足して100になる仮説をたてて、論理的に検証する方法です。
USJで言えば、来場者数の減少はどこに原因があるのかを閑雅る時に、
- 男性客か、女性客か
- 女性客の中の、どの年齢層か
- その年齢層のなかのどういった人たちか
こうやって、原因を絞っていくと、漏れがないです。
それぞれの原因を探っていく訳です。
初めから、ファミリー層と決定づけてしまうと、思ったようには伸びないという事が起きてきます。
例えば、ファミリー層向けには、ワンダーランド。
若い女性にはゾンビ
オタクたちには、モンハン、バイオハザードとか。
もう一つのフレームワークは、戦略的フレームワーク。
目的 → 戦略 → 戦術
の順番で考えていくことです。こうすることによって、自動的に戦略が必要条件になって、戦術がアイデアになります。
例えば、
目的 USJの来場者を安定して1000万人にする事
戦略 ファミリー層の獲得
戦術 小さな子供でも楽しめるというイメージ、予算内で出来ること、今ある施設で対応できること
と言う形で考えていけば、アイデアは思いつくと話されています。
森岡毅氏は、クリエイティブな人で、空からアイデアが降ってくるんじゃない?とよく言われるようですが、そんなことはなくて、綿密にフレームワークにそって考えた結果だと話されています。
そして、その次は、
「フレームワークで考えるべきポイントを明確にし、リアプライで世界中からアイデアの断片を探し、自身やチームの持つ情報のストックを活用したら、あとはアイデアを考えつくまで考え抜くことです。粘り強さや情熱がなければ、大きな局面を打開するような斬新なアイデアは生まれません」
(出展:プレジデント)
と話されています。
まとめると、森岡毅氏のアイデアの手法は
まずは、目的を考える
フレームワークにそって戦略、戦術を考えてアイデアを出す
リアプライ、ストック、コミットメントをしていく
この方法で、USJをV字回復させたんです。
最後に、森岡毅氏の言葉を載せておきます。
「ある問題について、地球上で最も必死に考えている人のところにアイデアの神様は降りてくる」